はじめに
この記事では公務員の受験を予定している就活生に向けて、民間企業の選考でよく使われるSPIの概要と公務員試験との違いをお伝えします。
近年は公務員試験でもSPIを導入する団体もあり、公務員のみを受験する就活生についてもSPI対策は欠かせないものです。
そのため、SPIは公務員試験と民間企業の両方で役立つこともあり、おすすめの対策法を詳しく解説しました。
また、内定獲得に繋がる実践的なアドバイスについても紹介していますので、公務員試験を目指す就活生は、ぜひ参考にして今後の活動に役立ててください。
就活生の能力・性格を確認するSPIとSPI3の違い
SPIは社会人の転職活動で使われることもありますが、多くは就活生の能力や性格を確認するために実施されます。
SPIとは「Synthetic Personality Inventory」の略で、現・リクルートマネジメントソリューションズが開発した能力や行動の特性を知るための適性試験です。
選考の説明にSPIとだけ表記される場合と、SPI3と表記される場合がありますが、両者の違いについて紹介します。
SPI
SPIとSPI3はバージョンの違いで、2013年1月4日以降はSPI3が使われています。
したがって、SPIとだけ書かれている場合もSPI3の試験を指している可能性が高いです。
試験は「知的能力」と「性格」という2つの検査で構成されます。
「知的能力」は言語分野(国語)と非言語分野(算数・数学系)の2種類の基礎能力を図る試験です。
「性格」は個人の基本的な特性を測定する試験になります。
SPI3
現在のSPI3とそれまでのSPIの大きな違いは、性格検査の中に新しい項目が追加されたことです。
具体的には「社会関係的側面」「組織適応性」が追加されています。
社会関係的側面では、下記の項目の度合いを測定します。
- 従順性・・・他人の意見に従いやすいか
- 回避性・・・対立やリスクを避けやすいか
- 批判性・・・他人の意見を批判しやすいか
- 自己尊重性・・・自分の意見を尊重しやすいか
- 懐疑思考性・・・他人を疑いやすいか
また、組織適応性で測定するのは、下記の項目を重要視する度合いです。
- 創造重視・・・新しい事業にチャレンジしたり、積極的に革新してゆく企業
- 秩序重視・・・各自の目標、ノルマが明確に決まっている企業
- 調和重視・・・チームとしての強みを大切にする企業
- 秩序重視・・・決められたルールに従って全体を統率する企業
性格検査の項目が追加されたことで、従来の能力だけでなく組織の考え方と就活生とのマッチングを確認するツールとして利用されるようになりました。
近年公務員試験にSPIを導入する自治体も増えている
SPIは民間企業で実施されると思われがちですが、実は公務員試験でSPIを実施する自治体も増えています。
具体例を示しますので、これからの対策の参考にしてください。
市役所試験
SPIが最も普及したのは、市町村役場の採用試験です。
従来の教養試験に替えて、SPIを導入した自治体もあります。
事務職以外にも土木・建築職、保健師のような職種にも適用されているのです。
実施団体の詳細は、下記のサイトから調べることもできます。
都道府県庁
都道府県の試験においても、SPIを実施する団体があります。
例えば、大阪府の行政職職員試験では、第1次試験にSPI3試験とエントリーシートが課される内容です。
このように教養試験をなくして、SPIで選考を進める団体があるので、民間企業と並行して受験したい就活生にとっては試験準備の負担が減るでしょう。
参考:令和5年度大阪府職員採用試験〔行政(大学卒程度)〕試験案内
従来の教養試験とSPIかを選択できる自治体もある
自治体によっては、従来の教養試験とSPIを選択できる自治体もあります。
例えば、京都府福知山市の選考試験では、第2次試験で教養試験とSPI3試験の選択制となっています。
どちらか得意な方で選考を進めることができるので、就活生にとっては嬉しい仕組みです。
国家公務員は教養・専門試験のみ
国家公務員試験で、SPIは導入されていません。
教養・専門試験のみですので、国家公務員専願の就活生はSPI対策が何らかの理由で必要になったときに行えば間に合います。
自分の望む国家公務員に向けて、まずは対策を進めることをおすすめします。
SPIと公務員試験の共通点
SPIと公務員試験は、全く別の試験のように見えますが共通点もあるのです。
算数・数学が関わる分野、国語が関わる分野の対策で共通する部分が見られます。
順番に紹介しますので、これからの受験の参考にしてください。
「SPIの非言語分野」と「公務員試験の数的処理」
公務員の教養択一試験(数的処理)では、「数的推理」「判断推理」「資料解釈」が出題されます。
SPIでも非言語分野が出題されるのですが、特に数的推理で勉強範囲がリンクしています。
難易度はSPIよりも公務員試験の方が高いです。
一度公務員試験の対策として、数的推理の基礎を磨きあげれば、後にSPIが必要になったときにスムーズに対策できるでしょう。
「SPIの言語分野」と「公務員試験の文章理解」
SPIでは、公務員試験の文章理解のレベルを基礎的にしたものが出題されます。
特に「空欄補充」や「文章整序」の問題は、公務員試験を単純化したような内容です。
そのため、難易度としては数的処理と同様、公務員試験の方が高いと言えます。
公務員の優先度が高い就活生は、公務員試験の対策をしっかりしておけばSPIの対策には大きく時間をかけずに済むでしょう。
SPIと公務員試験の違い
SPIと公務員試験の共通点がわかったところで、次に両者の違いについて紹介します。
違いを抑えることで、どこを重点に置いて学習すべきか目安になります。
ぜひ、参考にしてこれからの対策の時間配分を考えるのに役立ててください。
受験科目
まず、SPIの受験科目は下記の3つのみです。
- 言語分野
- 非言語分野
- 性格検査
一方、公務員試験の受験科目は実施団体によりますが、多岐にわたります。
- 数的処理
- 文章理解
- 社会科学
- 自然科学
- 人文科学
- 専門択一試験
- 論文試験
- 専門記述試験
SPIの受験科目は少ないため、試験が必要になってから短期間での追い込み学習でも対策が間に合うかもしれません。
一方、公務員試験は科目数がSPIよりも多くなっているため、短期間の対策は厳しいでしょう。
早い人で大学1回生のときから対策している人もいるので、公務員を目指すことを決めたのであれば少しでも早く対策を始めることをおすすめします。
SPI検査ならではの科目は、性格検査です。
300問ほどが出題され、出題内容に合致するかどうかを回答します。
具体的には、考え方や行動を質問し、その人がどのような仕事や組織に向いていそうかを把握する試験です。
事前に自己分析をしっかりしておけば苦労せずに進められるでしょう。
難易度
一般的にSPIよりも公務員試験の方が難易度が高くなります。
公務員試験の場合、筆記試験の出来が重視されるので対策は念入りに行うことが必要です。面接の結果がよくても筆記試験の結果が悪いと不合格になってしまう可能性もあります。
民間企業では、SPIは足切りに使われることがあります。
競争倍率の激しい企業だと、成績の良い人のみ面接に進めるというケースもあるでしょう。
ですが、難易度は公務員試験の方が上なので、教養レベルの問題で高得点が取れる人はSPIでも平均点を上回る点数が取れる可能性が高いです。
解答時間
SPIの言語・非言語分野の問題は、試験形式(テストセンターでの受験・ペーパーテストによる受験)により時間が異なり、40〜70分の制限時間で行われます。
全部で70問近くあるため、各設問に対してかけられる時間は1分ほどと極めて短いのが特徴です。
性格試験の解答時間は30分程度ですが、こちらは時間が足りなくなることはあまりないでしょう。
公務員試験の解答時間は、実施団体により異なりますが2〜3時間が一般的です。
出題数は40〜50問ほどのため、1問あたり約3分で解答する必要があります。
時間だけ考えるとSPIの方が短いので難易度が高そうですが、問題は公務員試験の方が難しいので、どちらもスピード勝負の試験になるでしょう。
公務員志望者におすすめのSPI勉強方法4選
公務員志望者は、民間企業のみを志望する学生よりも多くの勉強時間が必要です。
この章ではおすすめのSPI勉強法4選を紹介します。
どれも手軽に実践できるものばかりですので、積極的に取り入れていただくことをおすすめします。
①SPIと公務員試験の対策におすすめのサイトを紹介
SPI・公務員の教養試験で使えるおすすめサイトを3つ挙げました。
どれか一つでも利用してみることで、紙の対策本を買うことなくいつでも好きなタイミングで勉強を開始することができます。
SPIやC-GABなど適性検査対策や仕事で数学を使う人、趣味で数学を学ぶ方向けの数学系の問題に特化したサイトです。
会員登録不要で全部で11問、制限時間は10分の模擬試験を受けることができます。
学生時代、数学が得意でなかった人には「やってはいけない勉強法」がサイトに記載してあるので、勉強の参考になるでしょう。
会員登録は必要ですが、言語問題15分・非言語問題35分の計50分の模擬試験を受けることができます。
会員内の順位がランキング形式で表示されるので、他の学生と比較することも可能です。
受験回数が決まっているので、本番前の実力確認として受けることをおすすめします。
実力アップ講座と年10回の全国一斉WEB模擬テストで、就職試験によく出る問題の対策が可能です。
会員登録すると総計600問+初級講座100問の練習問題で、筆記試験対策ができるのが特徴です。
一般常識・時事問題も出題されるので、公務員試験でも役に立つ可能性があります。
②1冊の問題集を繰り返し解く
SPIの問題集は書店に多数並んでいるので、つい何冊も買いたくなってしまうかもしれません。
ですが、自分が解説がわかりやすいと感じた1冊のみを購入して、繰り返し解いたほうが学習効率が上がります。
なぜなら、問題集を何冊も買うと、得意な問題と苦手な問題の見極めが難しくなり、苦手な分野の底上げに時間がかかってしまうからです。
SPIは問題の傾向がある程度は決まっているため、出題パターンに沿って解答法を身につけられたら、実はそれほど難しくありません。
特に公務員試験の対策で忙しい就活生は、あまり手を広げずSPI対策本を買うなら1冊にとどめましょう。
③苦手な問題の対策に力を入れる
得意な問題で得点源を獲得した方がよいと思う人もいるかもしれませんが、SPIでは苦手な問題の対策に力を入れた方が本番でよい結果が出やすいです。
SPIは問題のパターンが多く、幅広く出題される試験のため、苦手なところが多ければ多いほど失点につながります。
苦手な問題から逃げずに、できる限り解答方法を覚えて、弱点を最小限にした状態で試験に臨んでください。
そうすれば、SPIで足切りされることなく、選考を優位に進めることができる確率が高まります。
④アプリを活用する
通学などの移動時間にも勉強したい人には、アプリのダウンロードもおすすめです。
無料で利用できるアプリもありますので、必要な方はぜひ探してダウンロードしてみてください。
SPI全体の対策ができるもの、非言語分野または言語分野に特化したアプリもあります。
SPI用の対策本を既に買っている人は、あまり手を広げ過ぎず移動時間に限定した利用をするとよいでしょう。
もし、非言語分野が苦手であれば、その分野に特化したアプリを使って弱点を強化しましょう。
SPIと公務員試験対策を両立させる5つのポイント
続いて就活生がSPIと公務員試験対策を両立させるポイントを紹介します。
特に公務員試験は受験チャンスが限られていますので、戦略的な考え方が必要です。
この章でポイントを解説しますので、これからの対策を考えるきっかけにお役立てください。
①志望する自治体を決める
最初に必要になるのが、志望する自治体を決めることです。
自治体は自分の住んでいる地域に限らず、受験をすることができます。
そのため、民間企業と公務員試験を両方受ける人は、SPIを選択できる自治体を選ぶと効率よく学習できるでしょう。
一方、公務員を専願している人でSPI対策が負担に感じる人は、SPIを必要としない自治体を選ぶことができます。
いずれにしても、受験科目を確認して早めにどの自治体を志望するかを決めることは大切です。
自分の志望する自治体が決まったら、いつまでに何を学習すべきか逆算して早期に対策を開始することをおすすめします。
独学では厳しい人は、お金はかかりますが予備校や通信講座を活用して試験のポイントを教わりましょう。
②SPIと公務員試験の違いを理解する
志望する複数の自治体で、SPIと公務員用の筆記試験の両方を受験する必要がある場合、それぞれの受験科目を確認して違いを確かめてください。
重複する範囲もあれば、別途対策が必要な範囲もあるでしょう。
重複する場合は難易度の高い方のレベルに合わせて対策し、別途学習する範囲は足切りされないように対策時間を確保する必要があります。
受験する自治体は人それぞれで、学習範囲が全員同じということはありません。
自分の目で試験範囲を確かめて、必要な部分を念入りに対策するのが採用への近道です。
③公務員試験を中心に対策する
SPIと公務員試験であれば公務員試験の方が難易度が高くなります。
数的処理や現代文(文章理解)のような共通する範囲では、公務員試験の問題を解いて得点できるレベルまで実力を伸ばす学習方法を進めるのがよいでしょう。
難しい問題に対処できるようになれば、自然とSPIの問題もスラスラと解けるようになる思考力が身についているので、公務員試験でベストを尽くすことをまずは優先することをおすすめします。
④SPIは差分を埋めるように対策する
公務員と民間企業を併願する場合には、公務員試験を優先しつつ、SPIの出題形式を確認して差分を埋めるような形で学習するのがおすすめです。
範囲は似ていても出題形式に多少の差はあるので、両方の試験問題を確認して傾向をつかんでおくことでどんな出題がされても冷静に対処できます。
可能であれば薄めのものでもよいのでSPIの問題集を1冊購入し、一通り解いておくと安心です。
時間がないときは、公務員試験で見慣れない単元だけでも目を通しておきましょう。
⑤SPI枠で受験する際は公務員試験の面接対策を徹底する
SPI枠は一般の教養試験の枠よりも受験ハードルが下がるので、倍率が高くなる傾向にあります。
そのため、高得点を取りたいところではありますが、同時に面接の比重も高まるので徹底した対策をしておくに越したことはないでしょう。
自治体によっては、小論文の執筆や自己PR、プレゼンテーションを課すところもありますので、SPI対策だけに力を入れ過ぎず人間性をPRする練習もしっかりと行い、準備しておくことをおすすめします。
内定獲得のためにできるパターン別対策法
最後にパターン別に、就活生が取っておくとよい対策法をお伝えします。
試験は競争倍率があり、内定をもらえる人には限りがあります。
「あのときしっかり対策しておけばよかった…」と後悔することのないよう、公務員試験を受ける予定の就活生は、ぜひチェックしておいてください。
公務員だけを志望する専願の場合
公務員の専願の場合には、従来通りの公務員試験対策を入念に行うことが内定への秘訣です。
面接の結果が同じぐらいの場合、筆記試験の成績がよい方が採用に近づくので、できる限り学習時間を確保して高得点を獲得できるように準備しておきましょう。
ただし、面接も軽視することなく、緊張しすぎて上手く話せなかった…ということのないように何らかの方法で練習を積んでおくのがおすすめです。
十分な試験準備をしたうえで公務員試験に臨む人の方が少ないので、あなたの勉強次第ではアドバンテージとなる可能性もあります。
専願の場合は、公務員試験の対策に可能な限り時間を確保しましょう。
公務員が第一志望で民間企業も併願する場合
民間企業も併願する場合も、基本的には公務員試験対策に時間をかける方法がおすすめです。
しかし、民間企業も志望する以上はSPI対策として1冊の問題集を一通り解くぐらいの対策はしておく必要はあります。
具体的にはSPIの受験をする1〜2週間前に一通り問題集を勉強するイメージです。
テストセンターでSPIを受験する場合、一度受験すれば結果を使いまわせるので、1回の受験で高得点を取れるように短期間で対策しましょう。
民間企業優先で公務員にも興味がある場合
民間企業を優先するのであれば、SPIを受験科目にできる自治体を受験先に選ぶことをおすすめします。
従来の公務員試験対策と並行するというよりも、SPIを利用して公務員試験を受験し、選考を通過すれば面接対策を徹底的に行うというスタイルの方が効率的です。
面接対策は民間企業の選考で場数を踏むことができますので、面接の緊張は公務員専願の人よりも少なくて済むかもしれません。
まとめ
ここまでSPIと公務員試験の関連性や状況別の対策方法についてお伝えしてきました。
SPIと公務員試験だと難易度は公務員試験の方が高いです。
そのため、公務員になりたい気持ちが強い就活生は、公務員試験対策に時間をかけてください。
民間企業優先の人、民間企業と併願する人は、公務員試験の受験科目を事前によく調べ、効率的な両立方法を見つけることが内定へのカギになります。
ご紹介した情報を踏まえて、自分自身の進みたい進路をもう一度考え、最適な学習方法を選んでください。
あなたが希望の進路に進めるよう、応援しています。